16時間断食は健康に良いのか?

16時間断食で食事の時間帯を制限することは、いくつかの健康効果が期待されていますが、果たして16時間断食は本当に健康的なのでしょうか?

結論から言うと、16時間断食にはいくつかリスクがあり、全ての人に健康面で勧められるものではありません。つまり向き不向きがあるということです。何も考えずに朝食を抜いている人は危険かもしれません。この記事をきっかけに、16時間断食について考えてみてください。

16時間断食で期待される健康効果

食事回数を減らし、お腹が空っぽの時間(空腹時間)を増やすことで、いくつかの健康効果が発揮されることが最近の研究でわかってきました。

最近注目されているのが、”オートファジー”です。

オートファジー(Autophagy)とは、自己「auto」を食する「phagy」ことで、細胞の自己成分(タンパク質など)を細胞内で分解する機構と定義されています。

このオートファジーによって、細胞内の不要なものが分解され、必要なタンパク質やエネルギーに変換されます。つまり、細胞内で物質のリサイクルが行われるわけです。さらに、病原体やがんなども排除されることも報告されています。

体内でオートファジーが活発に起こることで生活習慣病や感染症の予防、皮膚や筋肉の老化防止になると期待されています。

そしてオートファジーが活発になる条件が、約16時間の空腹状態であると言われています。

オートファジーの他に1日2食の半日断食によって得られる効果としては、胃や腸を休めること、内臓脂肪の燃焼などがあります。

16時間断食の落とし穴(リスク)

いくつかの健康効果が実証されている16時間断食ですが、落とし穴(リスク)もあります。

リスク1:必要な栄養素が不足する

16時間断食を行う場合、基本的には食事の回数を減らし1日2食に減らす人が多いと思います。1日3食で栄養バランスがとれていた人は1食分の栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)が減ることになりますので、必要な栄養素が不足する可能性があります。

元々食べる量が少ない人やハードな肉体労働をしている人、妊娠中の人や成長期の子供が食事を減らすことは病気につながる危険性があるので十分注意してください。

減らす前に現在の食事を見直し、2食で必要な栄養素をバランス良く摂取できる献立を考えてください。

また、健康な人でも注意は必要です。現代人は糖質や脂質を必要以上に摂取しており、逆にビタミンや食物繊維は必要な量を摂取できていない傾向にあります。ちなみに、糖質と食物繊維はどちらも炭水化物ですが、体内でエネルギーになるのが糖質でエネルギーにはなりませんが腸内環境を整えたりする働きがあるのが食物繊維です。

その状態で単に食事を減らしてしまうと、栄養バランスがさらに崩れる可能性があるので、2食にしても野菜や果物を増やすなどしてバランスを整えましょう。

リスク2:血糖値スパイク

食後の血糖値が急上昇と急降下を起こす状態を”血糖値スパイク”と言います。通常、食後1~2時間の血糖値は120mg/dLほどです(正常範囲:140mg/dL未満)。

しかし、血糖値スパイクが起こると血糖値は急激に140mg/dl以上に上昇します。これにより血液中の血糖値が大きく変動すると、酸化ストレスにより血管が傷つきます。そして、これが繰り返されると動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病になりやすくなったり悪化したりします。

血糖値スパイクは、1日3食の人よりも1日2食の人の方が起こりやすいと報告されています。その理由は、食事しない欠食時間が長いほど食後の血糖値が急上昇しやすくなるからです。

この対策として、食事の際にはGI値(Glycemic Index)を意識してみてください。

GI値は、「ある食品を食べた後にどれだけその食品が血糖値を上げるかを数値化したもの」です。つまり、GI値が高いほど血糖値が上がりやすい食品ということになります。

例えば、白米や食パン、うどんなどはGI値が高く、玄米や全粒粉パン、そばなどはGI値が低い食品です。GI値が低い食べ物を積極的に取り入れることで、血糖値の上昇を緩やかにし、血管へのダメージを減らしましょう。

安全に16時間断食を行うには

安全に16時間断食を行うためには、①栄養バランスと②血糖値スパイク(血糖値の上昇)に注意が必要です。そのためのコツをいくつか紹介します。

1.サプリメントを活用する

不足しがちなビタミンや食物繊維は、サプリメントで補うのがコスパが良く効率的です。

2.軽く朝食をとる

味噌汁や野菜サラダ、素焼きのナッツなど軽い朝食をとることで昼食後の急激な血糖値上昇を抑えることができます。

オススメは大豆食品(豆乳やきな粉など)です。大豆には血管を保護する成分が多く含まれているほか、”セカンドミール効果”による昼食後の血糖値上昇が穏やかになる効果も期待されます。
1日の最初にとった食事が2回目の食後血糖値にも影響を及ぼすという理論。

3.食物繊維が豊富な食材から食べる

食物繊維が豊富な食材は、野菜、豆類、海藻、きのこ、こんにゃくなどです。

これらの食材を最初に食べることで、食物繊維が先に消化管に入り、糖質の消化が邪魔され、血糖値の上昇が緩やかになります。

4.空腹タイマー法を活用する

空腹の我慢に有効的なのが、”空腹タイマー法”です。

これは食事を終えた時点でタイマーをONにします。後は目標の時間が経過するまで食事をしないという方法です。

この方法のメリットは、空腹時間が明確になるので、あとどれくらい我慢すればよいか目標がハッキリします。ゴールが見えれば頑張れますよね。

間食にオススメの食材

基本的には間食は控えた方が良いですが、どうしても小腹がすいて我慢できないときのオススメ食材を紹介します。

1.素焼きナッツ:ナッツに含まれるオレイン酸(不飽和脂肪酸の一種)は、悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やしたり、オートファジーを促進してくれます。また、脂肪の代謝を助けるビタミンB2も含むため、脂肪分が多いにも関わらず、太りにくい食材です。さらに、悪玉コレステロールの酸化を防ぐビタミンEも豊富に含んでいるので、相乗効果で動脈硬化や心臓病、脳梗塞の予防効果が期待できます。

2.プレーンヨーグルト:糖質を含んでいないプレーンを選んでください。乳酸菌だけで作られたものと、乳酸菌とビフィズス菌で作られたものがあります。後者の方がより整腸作用が高いのでオススメです。腸内環境を整えることで、免疫力を高めたり、便通を良くする効果が期待できます。

3.ガム:ガムを嚙んでいる間は、他のものを口にはしませんし、噛むことで満腹中枢が刺激されます。注意点としては、ガムにも糖質が含まれますので、一粒当たり2kcalくらいのものを選びましょう。

4.高カカオチョコレート:高カカオチョコレートとは、カカオの含有量が70%以上のものをいいます。高カカオチョコレートは、血糖値の上昇が穏やかな低GI食品に含まれます。また、含まれるポリフェノールには、高血圧や動脈硬化の予防、抗酸化作用によるアンチエイジング効果が期待されています。
低GI食品:GI値が55以下の食品。

5.コーヒーや紅茶:コーヒーや紅茶で香りを楽しむことで、一休みすることも一つの方法です。食事は香りから、お気に入りのフレーバーを見つけて楽しんでみるのはいかがでしょうか。

最後に

16時間断食について色々と紹介してきましたが、筆者の結論は「16時間より12時間断食」です。16時間断食は正直キツイですし、血糖値スパイクの影響が気になります。最後に1例として筆者の断食方法について紹介します。朝8時に軽食(砂糖不使用の豆乳とトマトジュース)をとり、夜8時までには夕食を終わらせます(12時間断食)。

参考文献
1.青木厚(2019)『「空腹」こそ最強のクスリ』アスコム
2.渡邉栄三(2016)『AutophagyとMitophagy』外科と代謝・栄養50巻5号: 307-311
3.池谷敏郎、渥美真由美(2016)『体においしい はじめてのスムージー150』西東社

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