性ホルモンと老化

テストステロン

男性において、主要な男性ホルモン(アンドロゲン)であるテストステロンの量は加齢に伴い低下します。テストステロンと老化には次のような報告があります。

  • 健忘型認知機能障害アルツハイマー病の患者ではテストステロンレベルが低い傾向があり、またテストステロンレベルが低いとアルツハイマー病の進行が早い。
  • テストステロンレベルの低さは筋力の低下と相関しており、テストステロンを投与することで筋力低下が改善する。
  • 総死亡率はテストステロンレベルが低い男性のほうが高い。
  • テストステロンの低下は動脈硬化の危険因子になる。
  • 動物実験ではテストステロンが前立腺がんを促進することが報告されているが、ヒトではそのような関係性は確認できていない。

テストステロンの減少は様々な老化症状・疾患と関連していることが分かってきましたが、単にテストステロンを補充すれば良いということではありません。テストステロン補充療法の主要な副作用に、赤血球の増加などがあるからです。

エストロゲン

女性ホルモン(エストロゲン)も加齢に伴い低下し、特に更年期(45~55歳)には著しく低下します。エストロゲンと老化には次のような報告があります。

  • エストロゲンの一種で最も強い活性をもつエストラジオールは、投与によって雄マウスの寿命は延ばすが、雌マウスの寿命には影響しない。
  • ヒトでは閉経後の女性に対するエストラジオールの投与により心疾患総死亡率が、投与期間が長いほど低下する。また、投与開始が60歳以前か以降になるかでは効果に大きな差は認められていない。ただし、エストラジオールの投与が閉経後6年以内の女性に対しては動脈硬化の進展を抑制する一方で、閉経後10年以上経過した女性に対しては同様の効果を発揮しない。
  • エストロゲンをプロゲスチンと併用した場合には、乳がんのリスクが増加することが知られているが、エストロゲンを単独で投与した場合には乳がんの発症リスクは認められていない。
  • 副腎から分泌され、末端組織中でテストステロンやエストロゲンなどに変換されるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)も加齢に伴い減少する。DHEAレベルが低いヒトでは死亡率が高い。しかしながらDHEAを補うことにより得られる、特に長期的な効果についてはまだ明らかにされていない。

参考書籍:高杉征樹,「老化研究をはじめる前に読む本 450本の必読論文のエッセンス」,羊土社,2022年,91-92ページ

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