なぜポストGWASが必要なのか?

ゲノムワイド関連解析(Genome-Wide Association Study: GWAS)は、疾患や形質と関連する一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism: SNP)を特定する有用な手法であり、過去10年間で、2500以上のGWASが、何百もの形質に対して行われてきました。

しかし、いくつかの重要な課題が残されており、GWASの結果から最も可能性の高い関連遺伝子やバリアントを特定するためには、領域的な連鎖不平衡(Linkage Disequilibrium: LD)パターンとバリアントの欠失性などの相関SNPの機能的結果だけでなく、遺伝子発現への影響やクロマチン相互作用部位での役割などを考慮する必要があります。

そこで、GWASの結果をより深く解析し、生物学的な意味を明らかにする ポストGWAS解析(Post-GWAS)が必要となっています。

ここでは、なぜポストGWASが必要なのかについて、説明します。

1.GWASの結果から直接、原因遺伝子や機能的変異を特定するのは困難

GWASによって特定されるSNPのほとんどは非コード領域(non-coding regions)や遺伝子間領域(intergenic regions)に存在しています。
これらの領域にあるSNPがどのように遺伝子発現や疾患発症に関与するかは、GWASのP値だけでは解釈が困難です。
LDの影響により、1つの関連SNPが多数の相関するSNPと共に検出されるため、どのSNPが本当に因果的な役割を果たしているのかは分かりません。


そこで、機能的アノテーション(Functional Annotation)を用いることで、GWASで検出されたSNPが影響を与える遺伝子を特定し、関連する生物学的経路(パスウェイ)を明らかにすることが可能になります。

2.GWASリスク領域(GWAS risk loci)には複数の遺伝子が存在する

1つのSNPが広いゲノム領域にわたって複数の遺伝子に影響を及ぼす可能性があります。
また、あるリスク領域に関連するすべての遺伝子が疾患と関係しているとは限りません。
例えば、疾患関連のSNPが転写因子の結合部位に影響を与え、遠く離れた遺伝子の発現を変化させることもあります。


そこで、eQTL(Expression-Quantitative Trait Locus : 発現量的形質遺伝子座)解析クロマチン相互作用解析を用いることで、リスクとなるSNPと影響を受ける遺伝子を結びつけることができます。
ポストGWASに用いられるプラットフォームであるFUMAでは、Genotype-Tissue Expression(GTEx)データなどを利用して、SNPが遺伝子発現に与える影響(eQTL)を解析し、また、Hi-Cデータを利用してクロマチン相互作用を評価しています。

3.GWASのP値だけでは機能的関連を解明できない

GWASは統計的な手法であり、疾患や形質に関連するSNPを検出することはできますが、そのSNPがどのように疾患や形質に関与するかは分かりません。
SNPがタンパク質の構造を変化させるのか、転写を調節するのか、はたまたスプライシングを変更するのかを知るには、さらなる機能的解析が必要となります。


そこで、SNPの機能的影響(遺伝子発現、エピジェネティック修飾、タンパク質変異など)を統合的に解析することが有用です。
例えば、RegulomeDBスコアCombined Annotation–Dependent Depletion(CADD)スコアを活用して、SNPの機能的影響を評価できます。

4.ゲノム全体のシステムレベルでの解析が必要

単一のSNPや遺伝子ではなく、複数の遺伝子や経路が関与するネットワーク解析を行うことで、疾患や形質の分子メカニズムを明らかにできます。
例えば、アルツハイマー病のGWASでは、多くのSNPが神経炎症に関わる経路に関連していることが示唆されています。

遺伝子セット解析(Gene Set Analysis)経路解析(Pathway Analysis)を行い、関連する生物学的プロセスを明らかにすることができます。
例えば、MAGMAを用いた遺伝子セット解析により、特定の疾患に関連する遺伝子群の特性を明らかにすることができます。

まとめ

ポストGWAS解析は、GWASの結果を機能的に解釈し、疾患や形質のメカニズムをより深く理解するために不可欠なプロセスです。
特に以下のことが重要となります。

・GWASの結果を生物学的に解釈するために、機能的アノテーションが必要である。
・関連する遺伝子や経路を特定し、疾患や形質のメカニズムを解明する。
・創薬ターゲットを特定し、個別化医療に貢献する可能性がある。
なお、上記に記載したFUMAは、ポストGWAS解析を効率的に行うための強力なツールであり、多くの研究分野で活用されています。

Watanabe, K., Taskesen, E., van Bochoven, A., & Posthuma, D. (2017). Functional mapping and annotation of genetic associations with FUMA. Nature Communications, 8, 1826. DOI: 10.1038/s41467-017-01261-5

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