脳の老化は止められる?最新研究が示した5つの老化パターンとは

脳の老化と聞くと、多くの人は「年齢とともに一様に衰えていくもの」
とイメージするかもしれません。
しかし、最新の大規模研究から分かってきたのは、
脳の老化には“いくつものタイプ”があり、人によって組み合わせが違う
という事実です。
今回紹介する論文は、約5万人分の脳MRIデータを解析し、
脳の老化を「5つのパターン」に分けて捉えることに成功しました。
🔬 どんな研究?
この研究では、
世界11の研究から集めた49,482人分の脳MRIと
AI(深層学習)を使った最新の解析手法を組み合わせて、
「脳が、どこから、どのように老化していくのか」を調べています。
ポイントは、
平均的な“脳年齢”を見るではなく、老化の“パターン”を見る
という発想の転換です。
🧩 脳老化は5つのパターンに分かれる
研究チームは、脳の萎縮の仕方を以下の5タイプに分類しました。
① 脳の奥が縮むタイプ(皮質下萎縮)
・脳の中心部(線条体など)が小さくなる
・ストレスやホルモンとの関連が示唆
・加齢初期から変化が出る人も
⇒ 「見た目は元気でも、脳の土台が弱りやすいタイプ」
② 記憶に関わる場所が縮むタイプ(内側側頭葉)
・海馬など、記憶の中枢が萎縮
・アルツハイマー病と強く関連
・物忘れと結びつきやすい
⇒ 「記憶力の低下が前面に出やすいタイプ」
③ 考える力が弱りやすいタイプ(頭頂・側頭葉)
・判断力・計画力・注意力に関係
・認知症の進行や精神疾患とも関連
⇒ 「段取りや判断がしづらくなるタイプ」
④ 脳全体がじわっと縮むタイプ(びまん性皮質萎縮)
・前頭葉を中心に広い範囲が萎縮
・飲酒・喫煙・食生活との関係が強い
⇒ 「生活習慣の影響を受けやすいタイプ」
⑤ 感情・自律神経に関わるタイプ(島皮質周辺)
・感情・内臓感覚・血管調節と関連
・心疾患、うつ、死亡リスクとも関連
⇒ 「全身の健康状態が脳に表れやすいタイプ」
📊 1つだけじゃない。組み合わせで老化する
重要なのは、この研究では、
誰かが1つのタイプだけを持つわけではない
ことが示されたことです。
②と③のパターンが強い人、④と⑤が目立つ人、5つが少しずつ進む人
など、人それぞれの“老化のパターン”が存在します。
🧪 生活習慣や遺伝とも深く関係
この研究ではさらに、
・ 喫煙
・ 飲酒
・ 食事
・ 睡眠
・ 遺伝子
などが、どのタイプの脳老化と結びつくかも詳しく解析されています。
つまり、
「どんな生活をしてきたか」が
「どんな形で脳に現れるか」
が、かなり具体的に見えてきたのです。
🔮 何がすごい?この研究の本当の価値
この研究の最大の意義は、
✔ 認知症の超早期サインを捉えられる可能性
✔ その人に合った予防法を考えられる
✔ 「脳年齢」よりはるかに精密
という点にあります。
将来的には、
「あなたは記憶型が弱りやすいから、この対策を」
「あなたは生活習慣型なので、ここを改善すると良い」
といった個別化された脳の健康管理につながる可能性があります。
おまけ:最先端の深層表現学習手法”Surreal-GAN”
まずGAN(Generative Adversarial Network)とは、
・ 偽画像を作るAI
・ それが本物か見抜くAI
この2つを競わせながら学習させる仕組みです。
有名な用途は、顔画像生成、画像修復、スタイル変換 など
普通のGANは、画像を「作る」ことが目的ですが、
Surreal-GANは、画像の“違いの方向性”を学習することを目的としています。
つまり、
・ 若い人の脳 ⇒ 高齢者の脳
・ 健常脳 ⇒ 老化脳
にどう変わるかを学習します。
この研究では、
① グループを2つ用意
・ REF群:50歳未満(比較的若い脳)
・ TAR群:50歳以上(老化が進んだ脳)
② AIが学習すること
「若い脳を、老化した脳に変換するなら、どんな“変化パターン”が必要か?」
③ 結果として得られるもの
・ 脳変化の隠れた軸(次元)
・ 本研究では 5つの軸で、それぞれが
👉 皮質下型
👉 記憶型
👉 思考型
👉 びまん型
👉 全身健康型
という老化パターンに対応します。
R-indexとは?
Surreal-GANは、あなたの脳が各パターンで どれくらい進んでいるかを数値化します。
例えば、記憶型:0.8、生活習慣型:0.2 のように出ます。
これを R-index と呼びます。
R-indexのすごい点は、
①:1人が複数タイプを持てる
従来の方法では、A型 / B型 / C型 のどれか1つに分類されますが、Surreal-GANでは、AもBもCも「少しずつ」持てます。
これは、現実の人体に近い考え方です。
②:病名を教えなくても学習できる
Surreal-GANは、「この人はアルツハイマー病」と教えなくても、
画像の違いだけからパターンを発見します。
これは、未知の老化パターンも見つかる可能性があります。
③:老化の“方向”を学ぶ
年齢予測AIでは、何歳か当てるのに対して、
Surreal-GANでは、どう変わっているかを学ばせます。
これは、アンチエイジング研究に向いています。
一言でまとめると、Surreal-GANとは
・ 脳画像の中にある
・ 老化や病気に特有な変化の「型」を
・ 自動で分解して見つけるAI
です。
✨ まとめ:脳の老化は“運命”ではない
この研究が教えてくれるのは、
・ 脳の老化は一様ではない
・ 生活や環境で左右される部分が大きい
・ 早く知れば、手を打てる可能性がある
ということです。
「脳は年齢で決まる」のではなく、
“どんな生き方をしてきたか”が脳に刻まれる。
そんな時代が、もう始まっています。
Yang, Z., Wen, J., Zhang, X., Davatzikos, C., et al. (2024). Brain aging patterns in a large and diverse cohort of 49,482 individuals. Nature Medicine, 30(10), 3015–3026. https://doi.org/10.1038/s41591-024-03144-x
