貧血と脳の関係、脳ドックのデータから明らかに!
「貧血」と聞くと、立ちくらみや疲れやすさをイメージする方が多いと思います。
ところが最新の研究では、貧血が脳の体積を小さくし、認知症リスクと関わる可能性が示されました。
特に女性でその影響が強いことが分かり、注目を集めています。
📊 貧血と脳の関係は?
貧血は血液中の酸素を運ぶヘモグロビンが低下し、全身に酸素が十分に運ばれなくなる状態です。
酸素不足は脳にとって大きな負担となり、慢性的に続くと神経細胞にダメージを与える可能性があります。
これまでの研究でも「貧血は認知症のリスク因子」とされていましたが、実際にどの部分の脳が影響を受けるのかは明確ではありませんでした。
🧪 脳ドックを受けた1,029人を調査
島根大学などの研究チームは、2015〜2022年に脳ドックを受けた1,029人の中高年を対象に、
・血液検査(ヘモグロビン濃度や赤血球の大きさ)
・認知機能テスト(MMSE)
・脳MRIによる体積測定
を実施しました。
MRI画像は高度な解析手法(ボクセルベース形態測定)を使い、脳の体積パターンを統計的に抽出しました。
🧩 結果は、男女で異なる脳の影響パターン
研究で分かったことは大きく2つです。
1.女性の貧血 → 辺縁系(特に海馬)や側頭葉の体積が小さい
海馬は「記憶の中枢」と呼ばれる部分で、アルツハイマー病でも萎縮が見られます。
そのため、女性の貧血は認知症リスクと強く関わる可能性があることが示唆されました。
2.男性の貧血 → 前頭葉や一部の海馬で体積が小さい
前頭葉は「計画性・注意・意欲」などを司る領域。
男性の場合、肥満や糖尿病などの生活習慣病と組み合わさって影響している可能性があります。
⚠️ なぜ女性に強い影響が?
女性に多い「鉄欠乏性貧血」が一因と考えられています。
鉄は酸素運搬だけでなく、神経細胞の働きや神経伝達物質の生成にも関与します。
そのため、鉄不足が長期的に続くと記憶をつかさどる海馬がダメージを受けやすいと考えられています。
一方、男性の貧血は「巨赤芽球性貧血」や「炎症性貧血」など、多様な背景を持つため、脳への影響パターンが異なると推測されています。
💡 まとめ:貧血は“脳の健康”にも関わる!
貧血は体の不調だけでなく、脳の体積縮小や認知症リスクに直結する可能性がある。
特に女性は、鉄不足による海馬や辺縁系の萎縮が強く関連することが示されました。
✅ あなたにできること
・健康診断で「貧血」を指摘されたら放置しない
・鉄分を意識した食生活(赤身肉、レバー、ほうれん草、大豆製品など)
・疲れやすさ、物忘れ、集中力低下を感じたら早めの受診
🔍 今後の展望
この研究は横断的な調査であり、因果関係までは断定できません。今後は「どの種類の貧血が脳萎縮に最も関係するか」を詳しく調べる必要があります。
しかし今回の結果は、「貧血=軽視できない脳リスク」という新たな視点を示しました。
Omori, N., Ishida, M., Takamura, M., Abe, S., & Nagai, A. (2024). Anemia-associated smaller brain volume and sex differences: A cross-sectional study of magnetic resonance imaging in brain health checkups. Frontiers in Aging Neuroscience, 16, 1444308. https://doi.org/10.3389/fnagi.2024.1444308