歯の本数だけじゃない!脳を守るには“歯周病ケア”が重要

私たちの脳の記憶を司る「海馬」は、年齢とともに萎縮していきます。特にアルツハイマー型認知症では、この萎縮が顕著に現れます。

ところが、「歯の健康」が脳の健康にも密接に関わっていることが、明らかになってきました。

最近の研究によると、ただ歯をたくさん残すだけでは、脳を守ることにはならないかもしれないのです。

今回は、歯の健康と海馬萎縮の進行との関連性に関する研究をご紹介します。

🔬 歯と脳の意外なつながり

この研究では、55歳以上の地域在住者172人を対象に、4年間にわたる追跡調査が行われました。
調べたのは、次の2つです。

・歯の本数

・歯周病の重症度(平均プロービングデプス:mean probing depth)

そして、同時に脳のMRI検査を行い、記憶を司る海馬という脳の大切な部分の萎縮の進み具合を観察しました。

🦷 結果は予想外だった!

・ 歯周病が軽い人では、歯が少ないほど海馬が縮みやすかった

・ 歯周病が重い人では、逆に歯が多いほど海馬の萎縮が進みやすかった

つまり、「歯をたくさん残せば脳にいい」とは一概に言えないのです。
歯周病に侵された歯を無理に温存すると、逆に脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆されたのです。

📚 なぜそんなことが起こるのか?

考えられている理由はこうです。

・歯周病が進行した歯は、慢性的な炎症の温床になる

・その炎症物質が血流を通じて脳に悪影響を及ぼし、特に海馬の萎縮を促進する

・結果として、認知機能の低下や認知症リスクの上昇につながる

つまり、健康な歯を残すのは大切ですが、深刻な歯周病が進んだ歯を無理に残すことは、むしろリスクと考えられます。

🧠 脳を守るために今できること

この研究が教えてくれるのは、「単に歯の本数を気にするだけではダメ」ということです。
歯ぐきと歯の健康(=歯周病のケア)をセットで考えることが重要です。

・ 定期的に歯科検診を受ける

・ 歯周ポケット(歯ぐきのすき間)をチェックする

・ 歯周病が進んだ歯は、治療または適切な抜歯を含めて専門医と相談する

・ 毎日の丁寧な歯みがきと、歯間ケアを習慣にする

これらの習慣が、あなたの脳を静かに守る力になるかもしれません。

⚠️この論文の限界点

・対象者は172名と比較的小規模であり、結果の一般化には慎重な解釈が必要。

・岩手県大迫町の地域住民に限られており、他の地域や国の人々に当てはまるとは限らない。

・歯周ポケットの平均値を用いており、局所的な重症度や炎症のばらつきは考慮していない。

・因果関係を直接証明できる設計ではないため、関連性の指摘にとどまる。

・研究期間中の歯科治療(抜歯や歯周病治療)が脳に与えた影響は考慮されていない。

✅まとめ

健康な歯を残すことは、脳の健康を守るカギと言われています。
しかし、歯周病を放置したままの歯は、脳にダメージを与えるリスクになる可能性があります。

これからは、「歯を残す」だけでなく、「歯を健康に保つ」ことにもっと目を向けていきましょう!

Watanabe, Y., Osaka, K., Hoshi, K., Yamamoto, T., Kasai, M., Hatta, K., … & Aida, J. (2023).
Associations of dental health with the progression of hippocampal atrophy in community-dwelling individuals. Frontiers in Aging Neuroscience, 15, 1184415. https://doi.org/10.3389/fnagi.2023.1184415

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