自閉症は予測できる?遺伝子×発達データでわかる“知的障害リスク”の新常識

お子さんが自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたとき、多くの保護者の方が「将来どのように成長するのだろう?」「知的障害を伴うのだろうか?」と不安を抱きます。

しかし、幼少期の段階で将来の発達を正確に予測することは、これまでとても難しいとされてきました。

今回紹介する研究は、遺伝情報と乳幼児期の発達の記録を組み合わせることで、将来、知的障害を伴う可能性をある程度予測できることを示した、画期的な内容です。

👶 なぜ“将来の予測”が必要なの?

ASDは1~3歳頃に診断されることが多い一方、知的障害の有無は6歳以降にならないと明確になりません。
この「空白期間」に、どの程度の支援が必要かを判断するのは容易ではありません。

もし早い段階で将来のリスクが分かれば、

・言語訓練

・学習支援

・生活スキル訓練

などを、より適切なタイミングと強度で提供できるようになります。

🧬研究で使われた2つの情報

この研究では、次の2種類の情報を統合しました。

① 遺伝情報

・多数の遺伝子の影響をまとめた「ポリジェニックスコア」

・まれに起こる遺伝子変異

② 発達マイルストーン

・歩き始めた月齢

・最初の言葉を話した時期

・二語文を話した時期

・言葉の後退(話せていた言葉を失う)

・トイレが自立した時期

いわば、「生まれつきの設計図」と「成長の足あと」を同時に見るアプローチです。

📊 どんなことが分かったのか?

・遺伝情報だけでは予測力は限定的

・しかし、発達マイルストーンと組み合わせると予測精度が向上

特定の遺伝的特徴と発達の遅れが重なると、知的障害を伴う確率が高くなる

特に、ある条件(詳しくは「おまけ」で)を満たすグループでは、
将来、知的障害を伴う確率が約55%
まで高まることが示されました。

📈 「起こる」だけでなく「起こらない」も分かる

興味深い点は、
「知的障害になる可能性」だけでなく、
「知的障害にならない可能性」も予測できたことです。

つまり、
✔ 比較的安心できるケース
✔ 注意深く見守るべきケース

を早期に分けられる可能性が出てきました。

💡 発達が遅れている子ほど、遺伝情報が役立つ

歩行や言葉の発達が大きく遅れている子どもでは、
遺伝情報を加えることでリスクの見分けが約2倍はっきりしました。

これは、発達の遅れが「隠れた遺伝的要因」を反映している可能性を示しています。

🌱 この研究がもたらす未来

この研究は、
「診断をつけるため」ではなく、
より良い支援につなげるための予測を目指しています。

将来的には、

・遺伝検査結果

・母子手帳や健診データ

を活用し、個々の子どもに合った支援プランを早期に提案する医療が実現するかもしれません。

⚠️ 知っておきたい注意点

予測は「確率」であり、決めつけではありません

また、すべての民族・地域で同じ精度とは限りません

環境や教育の影響も大きく関わってきます

つまり、希望を奪うツールではなく、可能性を広げるツールとして使うことが重要です。

おまけ:知的障害のリスクを高める条件

条件①:影響の大きい遺伝的変化をもつ

研究では、次のような遺伝的特徴を持つ場合に、知的障害リスクが高くなる傾向が示されました。

・ de novo機能喪失変異(LOF変異)
 ⇒ 遺伝子の働きをほぼ失わせる強い変異

・ de novoミスセンス変異(有害と予測されるもの)

・ コピー数多型(CNV)
 ⇒ 染色体の一部が「欠失」または「重複」

・ 認知能力に関連するポリジェニックスコア(PGS)が低い
 ⇒ 多数の遺伝子の影響を合算した“認知力に不利な体質”

特に、発達に重要な遺伝子(constrained genes や発達障害関連遺伝子)に影響する変異を持つ場合が重要とされました。

条件②:乳幼児期の発達マイルストーンに遅れがある

以下のような発達の遅れがある場合です。

・ 歩き始めが18か月以降

・ 初語が15か月以降

・ 二語文が24か月以降

・ いったん話せていた言葉が減る(言語退行)

これらは、保護者が日常的に気づきやすい指標です。

✨ まとめ

・遺伝子 × 成長の記録 = 未来へのヒント

・この研究は、ASDのある子どもの将来像を、より早く・より客観的に理解する道を開きました。
・「早く知ることで、早く支えられる」——そんな時代が近づいています。

Bourque, V.-R., Schmilovich, Z., Huguet, G., England, J., Okewole, A., Poulain, C., Renne, T., Jean-Louis, M., Saci, Z., Zhang, X., Rolland, T., Labbé, A., Vorstman, J., Rouleau, G. A., Baron-Cohen, S., Mottron, L., Bethlehem, R. A. I., Warrier, V., & Jacquemont, S. (2025). Genomic and developmental models to predict cognitive and adaptive outcomes in autistic children. JAMA Pediatrics, 179(6), 655–665.
https://doi.org/10.1001/jamapediatrics.2025.0205

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