40代から気にしたい脳のサイン:PSMDとは?
🧠「白質」って何?
私たちの脳には、灰色の部分(灰白質)と白色の部分(白質)が存在します。
この白質は、神経細胞同士をつなぐ情報の通り道(ケーブル)のような役割をしています。
この白質が傷つくと、
・考えるスピードが遅くなる
・物忘れが増える
・判断力や段取り力が落ちる
といった変化が起こりやすくなります。
特に高齢になると、脳の細い血管が傷む「脳小血管病」が原因で、白質がダメージを受けることが多いことが分かっています。
🩻 MRIでは見えない脳のダメージがある?
病院でよく使われるMRIでは、「白質高信号(WMH)」と呼ばれる白いシミのようなものが見えることがあります。
しかし実は、「見た目が正常に見える白質の中にも、目に見えないダメージが存在する」ことが近年の研究で分かってきました。
そこで登場するのが、DTI(拡散テンソル画像)というMRIの応用技術です。
🔍 PSMDとは?
Peak Width of Skeletonized Mean Diffusivity (PSMD)とは、日本語では「骨格化平均拡散率のピーク幅」などと訳されますが、
DTIを使って白質の状態を数値化する新しい指標です。
簡単に言うと、
脳の白質の中で、どれくらいダメージの「ばらつき」があるか
を表しています。
白質が均一に健康ならPSMDは低く、あちこちにムラのあるダメージが広がっているとPSMDは高くなります。
しかもPSMDは、
・全自動で計算できる
・数分で算出可能
・MRI装置が違っても結果が安定
という、研究にも臨床にも使いやすい特徴があります。
👉 PSMDが高いと、何が起こるの?
この論文では、約2万人以上のデータをまとめた結果として、次のことが示されています。
・PSMDが高い人ほど、 考えるスピード(情報処理速度)が遅い
・記憶力や判断力とも関係することがある
・特に脳小血管病が強い人で、PSMDと認知機能の関係がはっきり出る
つまりPSMDは、「脳の老化スピード」や「白質の傷み具合」を反映する指標と考えられているのです。
⏳ 年齢とともにPSMDはどう変わる?
興味深いことに、PSMDは年齢とともに変化します。
若い頃はゆっくり上昇しますが、60歳前後から上昇が加速することが分かっています。
これは、「年を取ると急に脳が衰える」というより、白質のダメージがある段階から一気に広がる可能性を示しています。
⚠️ PSMDにも弱点はある
とても有望なPSMDですが、万能ではありません。
・どの場所が悪いかは分からない(全体の指標)
・病気の種類を特定する指標ではない
・「PSMDが上がった=必ず症状が悪化」とはまだ言えない
著者らは、長期間の追跡研究や、病理(組織)との比較が今後の課題だと述べています。
🚀 これからの医療・研究での期待
PSMDは今後、
・認知症の超早期発見
・脳の老化を遅らせる治療の効果判定
・生活習慣や運動、食事が脳に与える影響の評価
などに使われる可能性があります。
「症状が出る前の脳の変化」を見つけるという点で、PSMDはとてもワクワクする指標です。
まとめ
・白質は脳の情報ネットワーク
・PSMDはその“通信環境の乱れ”を数値化
・認知機能、とくに思考スピードと深く関係
・将来の脳ドックや予防医療への応用に期待大
Zanon Zotin, M. C., Yilmaz, P., Sveikata, L., Schoemaker, D., van Veluw, S. J., Etherton, M. R., Charidimou, A., Greenberg, S. M., Duering, M., & Viswanathan, A. (2023). Peak width of skeletonized mean diffusivity: A neuroimaging marker for white matter injury. Radiology, 306(3), e212780. https://doi.org/10.1148/radiol.212780
