約5,000種のタンパク質を徹底解析!老化の進行を見える化する縦断プロテオミクス

「老化」と聞くと、多くの人は年齢そのものを思い浮かべるかもしれません。しかし、同じ年齢でも元気な人とそうでない人がいるように、老化のスピードには個人差があります。
今回紹介する研究は、その違いを血液中のタンパク質の変化から読み解こうとした、非常に注目度の高い最新研究です。

🔍 老化は「年齢」だけでは測れない

これまで老化研究では、「生物学的年齢」と呼ばれる指標が使われてきました。
これはDNAや血液データをもとに、「体が実際にどれくらい老いているか」を推定するものです。

しかし、従来の多くの指標には弱点がありました。
それは、ある1時点のデータしか使っていないという点です。

老化という現象は、ゆっくり進む人や途中から急に進む人など、時間とともに変化するプロセスです。
したがって、1回の検査だけでは、その「進み方」までは分かりません。

🧪 注目されたのが「縦断プロテオミクス」

そこで登場したのが、縦断プロテオミクスという考え方です。

これは、『血液中の数千種類のタンパク質を複数の時点で測定し、その変化のパターンを解析する』という手法です。

今回の研究では、

・約5,000種類のタンパク質

・10年以上にわたる3回の血液検査

・数千人規模の大規模データ

を用いて解析が行われました。

📈 新しい老化指標「LPAI」とは?

研究者たちは、縦断プロテオミクスデータをもとに、
LPAI(Longitudinal Proteomic Aging Index)
という新しい老化指標を開発しました。

この指標の最大の特徴は、
✅ 老化の蓄積量
✅ 老化の進むスピード(軌跡)

この2つを同時に評価できる点です。

つまりLPAIは、「どれくらい老いているか」と「どれくらいの速さで老いているか」を一緒に捉える、これまでにない指標なのです。

⚠️ LPAIが高いと何が起きるのか?

研究の結果、LPAIが高い人は、

全死亡リスクが約2.5倍高い

心血管疾患による死亡リスクが約1.8倍高い

がんによる死亡リスクが約2倍高い

ことが明らかになりました。

さらに、複数の疾患を同時に抱える多疾患併存フレイル(虚弱)のリスクも高くなることが明らかになりました。

特に印象的なのは、年齢や生活習慣を考慮してもなお、LPAIが強力な予測因子だったという点です。

つまり、同じ年齢でも「体の中ではまったく違う老化が進んでいる」ことが、科学的に示されたのです。

❓ 体の中では何が起きている?

LPAIに関係するタンパク質を詳しく調べると、

・細胞を支える構造の変化

・エネルギー代謝の乱れ

・成長因子やホルモン調節の異常

・遺伝子の働き方の変化

など、老化の本質に関わる生物学的変化が浮かび上がりました。

つまりLPAIは、単なる「統計的な数字」ではなく、体の中で起きている老化現象そのものを反映していると考えられます。

🌱 この研究が示す未来

この研究は、次のような可能性を示しています。

・老化の進みやすい人を早期に見つける

・アンチエイジング介入の効果を評価する

・健康寿命を延ばす個別化医療への応用

将来的には、「あなたは今、老化が加速している時期にいます」
といった評価が、科学的にできる時代が来るかもしれません。

✨ まとめ

・老化は「年齢」ではなく「進み方」に個人差がある

・縦断プロテオミクスは、その違いを捉える強力な方法

・新指標LPAIは、死亡・病気・フレイルを強く予測

・老化研究と健康寿命の未来を大きく変える可能性がある

老化を正しく知ることは、よりよく生きるための第一歩。
この研究は、そのための新しい「ものさし」を私たちに提示してくれました。

Rao, Z., Wang, S., Li, A., Blaha, M. J., Coresh, J., Ganz, P., Marshall, C. H., Pankow, J. S., Platz, E. A., Post, W., Sedaghat, S., Rotter, J. I., Whelton, S. P., Prizment, A., & Guan, W. (2025). A novel longitudinal proteomic aging index predicts mortality, multimorbidity, and frailty in older adults. Aging Cell, 24, e70317. https://doi.org/10.1111/acel.70317

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