親子の脳はどこまで似ている?―親子の脳の似方と知能の関係を解明!
「性格や見た目は親に似る」とよく言われますが、実は脳の構造も親子で似ていることが最新研究で明らかになりました。
さらに、その似方は「父と子」「母と子」の性別の組み合わせによって違うことも分かってきました。
今回は、東北大学の研究チームが発表した成果をご紹介します。
👨👩👧👦 親から子へ受け継がれるもの
私たちの行動や性格は、遺伝や環境を通じて親から子へと伝わります。
特に精神的な健康や知能は、世代間で受け継がれることが知られてきました。
しかし、「脳の形や構造がどのくらい親子で似るのか?」については、これまで十分に分かっていませんでした。
🔬 TRIO研究とは?
今回の研究は、日本人152組の「親子三者(父・母・子)」を対象に実施されました。MRIを使って、以下のような脳の特徴を詳しく調べています。
・皮質の厚さ(CT)
・表面積(SA)
・脳のしわの複雑さ(LGI)
・皮質下の体積(SV)
このように多角的に測定することで、親子間の「脳の似方」をより正確に評価しました。
👩👧👦 親子の脳は性別で似方が違う!
研究チームは、父―息子、父―娘、母―息子、母―娘の4つの組み合わせを比較しました。
その結果、親子の性別によって脳の似方に明確な違いがあることが分かりました。
娘は父母どちらにも似やすい
・皮質の厚さ(CT)では、娘は父・母両方に似る領域がバランス良く見られました。
・皮質のしわの複雑さ(LGI)でも、娘はほとんどの領域で父母両方に似る傾向が強く、まさに「両親の特徴を合わせ持つ」パターンでした。
息子は母親に似やすいが、父親だけに似る領域もある
・CTでは、息子は特に母親との類似が多く見られました。
・一方、LGIでは息子は父親にしか似ない領域も存在し、性別による違いが顕著でした。
母―息子ペアだけ似ない脳領域が存在
・右前頭葉や側頭葉の一部(例:右6a領域、8Av領域、後頭頂溝領域など)では、母―息子間での類似が他の組み合わせよりも有意に弱いことが確認されました。
・この現象は「母と息子だけが似ない」パターンとして注目され、遺伝子や胎内環境など性特異的な要因の可能性が指摘されています。
父―娘に特有の強い相関
・眼窩前頭回(OFC、13l領域)などでは、父―娘ペアで特に強い相関が見られ、父親から娘に伝わる独自の脳の特徴が示唆されました。
📈 脳の似方と知能の関係
さらに驚くべきことに、親子の脳が似ているほど、知能指数(IQ)も似ていることが確認されました。
特に、脳の表面積の類似がIQの近さと関連しており、「脳の形の似方」が「頭の良さの似方」にもつながっている可能性が示されました。
🌱 なぜ性別によって違うのか?
この不思議な現象の理由はまだ完全には分かっていません。
考えられているのは:
・母親から子どもに伝わる”胎内環境”の影響
・遺伝子の刷り込み(親由来の遺伝子の働き方の違い)
・父親・母親との日常的な関わり方の違い
これらが複雑に組み合わさり、親子の脳の似方に影響していると考えられます。
🔮 研究の意義と今後の展望
この研究は、親子の脳の類似性が「精神疾患や知能の世代間伝達」の仕組みを理解する手がかりになる可能性を示しました。将来的には、
・発達障害や精神疾患の 予防や早期発見
・脳の加齢や認知症研究への応用
などにも役立つと期待されています。
✨ まとめ
・親子の脳は確かに似ている!
・性別の組み合わせによって「似方」が違う
・脳の似方は知能の似方とも関連している
見た目や性格だけでなく、脳の形までも親子でシンクロしているというのは驚きですね。今後の研究によって、私たちが親から何をどのように受け継ぐのか、さらに明らかになっていくでしょう。
Matsudaira, I., Yamaguchi, R., & Taki, Y. (2025). Parent–offspring brain similarity: Specificities and commonalities among sex combinations – the TRIO study. iScience, 28(7), 112936. https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.112936