57歳・70歳・78歳に脳が変わる?血液からわかる老化のサイン!
年齢を重ねると誰もが気になる「脳の老化」。
しかし、脳は毎年少しずつ衰えるのではなく、ある時期に急激な変化が起こることをご存じですか?
最新の科学研究によると、脳の老化には「波」のような変化のパターンがあり、特に57歳、70歳、78歳に大きな転換点があることがわかってきました。
しかも、その兆しは血液中のタンパク質を見ることで予測できる可能性があります。
🧪 血液から“脳年齢”がわかる時代に!
この研究では、先ず10,949人の脳MRIデータを用いて、脳の構造(皮質の厚さや体積など)をAI(LASSO回帰という機械学習手法)で分析しました。
多くの人のデータをもとに、AIが「この脳は○歳っぽい」と判断し、その「脳年齢」と実年齢との差(BAG:Brain Age Gap)を算出しました。
🟢 BAGが0に近い → 脳年齢が実年齢と同じ(平均的な老化)
🔵 BAGがマイナス → 脳が実年齢より“若く”見える(良好な状態)
🔴 BAGがプラス → 脳が実年齢より“老けて”見える(加齢が進んでいる)
次に、4,696人の血液中タンパク質(プロテオーム)をOlink Exploreプラットフォームを用いて測定しました(この研究では、2,922種類の血漿タンパク質のレベルを測定)。
各タンパク質について、線形回帰モデルを使ってBAGとの関連を評価しました。
その結果、BAGと関連の深い13種類の血漿タンパク質が見つかりました。
中でも注目されたのが、BCAN(ブレビカン)というタンパク質。これは脳の神経細胞の周りにある“神経の保護シールド”のような成分で、脳の健康や記憶に関わる重要な役割を持っていることがわかりました。
📉 脳の老化は直線ではなく“波”で進む
研究では、年齢が進むにつれて変化する血液中のタンパク質の動きを分析。その結果、脳の老化は一定のスピードで進むのではなく、「波のように揺れ動く」ことが明らかになりました。
特に大きな変化が起きるのは以下の3つのタイミング:
🔹 57歳:代謝の変化や免疫の影響が強く現れる時期
🔹 70歳:神経の構造や運動機能に関わる変化が集中
🔹 78歳:炎症や老化関連のシグナルがピークに
この「3つの波」は、脳が変わりやすい時期=介入のチャンスでもあります。
🧠 脳の健康と病気予防に役立つ可能性も
BCANや他のタンパク質は、脳の構造や機能だけでなく、認知症・脳卒中・うつ病といった脳の病気とも関連していました。
たとえば、BCANの値が低い人は、将来的に認知症や脳卒中のリスクが高いことが示唆されました。逆に、高いレベルのBCANは脳を守る働きをしている可能性があります。
また、GDF15の値が高い人は、認知症や脳卒中、うつ病のリスクが高いことが示唆されました。このたんぱく質は、全身の老化と神経の変性をつなぐ“橋渡し的なバイオマーカー”として注目されています。
血液検査でこうしたタンパク質を測ることができれば、脳の老化を早期に察知し、予防や対策が可能になるかもしれません。
💡 まとめ
この研究が示した重要なポイントは3つ:
① 脳の老化は“波”のように進む
② 血液中のタンパク質が脳の状態を映し出す
③ 57歳、70歳、78歳が、脳の転換点となる重要な年齢
これらの知見は、脳の健康を維持するための「予防のタイミング」や「治療のターゲット」を見つける手がかりになります。
今後、血液1滴であなたの「脳年齢」がわかる時代が来るかもしれません。そして、自分の“脳の波”に合わせて、早めに生活を見直すことができれば、認知症などのリスクをぐっと減らせる可能性があります。
Liu, W.-S., You, J., Chen, S.-D., Zhang, Y., Feng, J.-F., Xu, Y.-M., Yu, J.-T., & Cheng, W. (2025). Plasma proteomics identify biomarkers and undulating changes of brain aging. Nature Aging, 5(1), 99–112. https://doi.org/10.1038/s43587-024-00753-6