脳が老けにくい人の共通点とは?7年間の研究で明らかになった習慣

「年をとると物忘れが増えるのは仕方がない」──そんなふうにあきらめていませんか?
近年の脳科学研究によって、高齢になっても記憶力を保つ方法が少しずつ明らかになってきています。

今回はスイスのチューリッヒ大学が7年かけて行った大規模研究をもとに、脳の老化を抑える生活習慣についてご紹介します。

🧩 認知症の前兆は、脳の「内側」から始まる

加齢による記憶力の低下は、脳の“内側”にある「嗅内皮質(きゅうないひしつ)」という部位の萎縮と関係があります。この嗅内皮質は、記憶を司る“海馬”につながる入り口のような存在であり、アルツハイマー型認知症でも初期にダメージを受ける場所の一つです。

🧪 7年間・231人を追跡!脳画像研究でわかった“脳の変化”

この研究では、64~87歳の認知的に健康な高齢者231人を対象に、7年間にわたって5回のMRI検査と記憶力テストを行いました。

調査の中では以下の3点に注目しています:

・脳の白質病変やラクナ(小さな脳梗塞)の進行

・嗅内皮質の厚みの変化(=萎縮の程度)

・記憶力(言葉や図形の覚えやすさ)

🧱 嗅内皮質の厚さと記憶力が関連!

解析の結果、嗅内皮質が厚い人は、記憶力の低下がゆるやかであることが分かりました。
つまり、嗅内皮質をいかに保護できるかが、記憶力を守るカギになる可能性があるということです。

🏃‍♀️ 運動や社交が“脳の保護”につながる?

では、嗅内皮質を守るにはどうしたらいいのでしょうか?
研究では、身体的活動(ウォーキング、スポーツなど)や社会的活動(友人との交流など)が活発な人ほど、右嗅内皮質の萎縮が少ない傾向がありました。

ポイントは次の3つ:

・運動や社交が「脳の健康」にプラスの影響を与える

・教育レベルが高い人は記憶力が高い傾向(ただし加齢による低下は避けられない)

・高血圧の薬の服用はラクナの増加を抑える効果がある可能性

🚫 「年だから仕方ない」はもう古い

この研究は、脳の老化はある程度コントロール可能であるということを示唆しています。
特に、“動く”こと、そして“人と関わる”ことが、記憶力の維持につながるというのは、現代を生きる私たちにとって非常に有益な情報です。

🔍 この研究の限界点

・対象が健康な高齢者に限定:認知機能に問題のない人のみを対象としており、認知症患者などへの一般化は困難。

・観察研究であり因果関係は不明:余暇活動と脳構造の関連は示されたが、因果関係(どちらが原因か)は証明されていない。

・自己申告による余暇活動の測定:活動量はアンケートに基づいており、記憶違いや主観的な誤差が含まれる可能性がある。

・教育レベルが高い参加者が多い:教育水準が高い集団に偏っており、一般人口とは異なる可能性がある。

✅ まとめ:今日からできる“脳を守る”生活習慣

・ 散歩や軽い運動を週に数回取り入れる

・ 友人や家族との交流を意識的に増やす

・ 趣味や新しいことに挑戦し、脳に刺激を与える

7年という長期研究から得られたこの知見は、私たちの生活にも応用できます。
「脳を守るには、体と心も動かそう」——その一歩が、未来の自分を守ることになるかもしれません。

Hotz, I., et al. (2023). Associations between white matter hyperintensities, lacunes, entorhinal cortex thickness, declarative memory and leisure activity in cognitively healthy older adults: A 7-year study. NeuroImage, 284, 120461. https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2023.120461

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